疫学データのアップデートのご協力のお願い
肺非結核性抗酸菌(NTM)症は、主に中高年以降の女性に好発する難治性の慢性進行性呼吸器感染症ですが、以前より、増加傾向にあることは臨床現場で実感されてきました。長らく、日本におけるその疫学的実態は不明でありました。2014年に実施された日本呼吸器学会の認定施設を対象に実施された全国調査では、日本の肺NTM症の罹患率が人口10万人対14.7人と判明しました。肺NTM症の罹患率は既に、排菌を伴う肺結核の罹患率を凌駕することが判明しました(Namkoong H, et al Emerg Infect Dis. 2016)。
これは、日常臨床において実感されていた肺NTM症の増加を裏付けるとともに国内外より大きな注目を浴びました。
一方、2014年の全国調査以後、約10年が経過しました。10年前と比較して、肺NTM症の患者数がさらに増加傾向が実感されていること、その中でも患者数が元々少ないとされていたM. abscessus症に関してはさらに増加していることが指摘されてきています。
また、肺NTM症以外に、播種性NTM症の病態も注目を浴びるようになってきました。以前より、播種性NTM症は、HIV感染や臓器移植後などの免疫不全の病態以外に、抗IFN-γ抗体陽性の例の存在も多く注目されております。しかし、播種性NTM症の疫学的実態は現在の所、ほとんど疫学的データが存在しません。
今回、全国疫学調査を約10年ぶりに実施し、NTM症の疫学の把握を目指します。本研究は、NTM症の診断及び治療法の開発に有用な情報となり、ぜひ、みなさまのご協力をお願いいたします。